松田主水のプログレ見聞録:第1回

プログレ、プログレと声高に叫んでも、何それ?っていう人は多いと思います。

ここ日本では他ジャンルに比べて希少種であるプログレッシブ・ロックについて、私松田の独断と偏見で論じ、ここをご覧の皆様に是非ハマって頂きたい!ということで、こんなコラムを始めます。


世界各国にプログレ・バンドは存在しますが、英国、ドイツ、日本等に絞り、あまり横展開はしません。


また、昨今のドリーム・シアター等プログレ・メタルと呼ばれるような融合音楽は、私としてはプログレと認めておりませんので、60年代半ばから80年代初頭あたりまでに登場した(本質的な意味でも)プログレッシブな音楽を対象とします。


それでは始めるとしましょう!


[プログレの起源はどこか?]

1969年10月10日にリリースされた英国プログレの金字塔、キング・クリムゾンのデビュー・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」から今年で50年。

プログレッシブ・ロックはこの作品で確立されたのは誰もが認めるところ。

しかしここに至るまでには、プレ・プログレと呼んでもいい作品があったからこそ、と言える。


思考の末に至った私的な結論。

プログレの種は、1966年にアメリカで制作発表されたビーチ・ボーイズ「ペット・サウンズ」「グッド・バイブレーション」「スマイル」、ボブ・ディラン「ブロンド・オン・ブロンド」、フランク・ザッパとマザーズ「フリーク・アウト」を起源とし、それらに影響された英国ミュージシャンが英国特有の(ヴィクトリア朝に至る伝統的な気風)フィルターを通して生み出したものだ。

その第一の発芽が1967年6月にリリースされたビートルズの「サージェントペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド」。


それまでのポップスはシングル中心で、アルバムはシングルの寄せ集めでしかなかった時代に、アルバム全体を使ってのコンセプト、ロックンロールに留まらない実験的かつジャンルレスな音楽フォーマット、観念的な歌詞といった、その後のプログレを特徴づける要素が既にこれらの作品に揃っている。


今回のコラム第1回で紹介する音源はビーチ・ボーイズ1966年10月リリースのシングル「グッド・ヴァイブレーション」。

バンドの頭脳、ブライアン・ウイルソンがドラッグを用いてインスピレーションを得ながら、この1曲に7ヶ月間90時間をかけたレコーディングの末に完成した、まさにプログレッシブな作品。


個別にレコーディングしたパートを、テープの切り貼りでガッチャンコして1曲にするモジュラー・レコーディングという手法によって、ブライアン言う所のポケット・シンフォニーと呼ぶに相応しい、当時としては画期的で複雑な作品が誕生した。

そのような実験的とも言える楽曲が全米1位を獲得するヒットとなったことは特筆すべきことだ。


単なるティーンエイジャー向けの甘い菓子のようだったポップスが録音芸術の域に達した瞬間だ。

当時の貴重なスタジオでの制作シーンと共にお聴きください!

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Good Vibrations the Lost Studio Footage

1969年10月10日リリースの英国プログレ金字塔、キング・クリムゾンのデビュー・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」に至るまでのプレ・プログレと呼べる作品を時系列に紹介していきます。