松田主水のプログレ見聞録:第3回

[プレ・プログレの名盤・名曲その2]

キング・クリムゾンのデビュー・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」に至るまでのプレ・プログレと呼べる作品を時系列に紹介するその2回目。

1968年に入ると、クラシックやジャズを音楽的ルーツとしたロック・バンドも登場し、ロックも多様化してくる。それらの総称として日本ではアート・ロックと呼ばれるようになった。

その中にはヴァニラ・ファッジやディープ・パープルなど当初はプログレ的な音楽を演奏していたものの、次第にハード・ロックなど違うジャンルへとシフトしていったバンドもいた。

①ザ・ナイス「アメリカ」

1968年7月にリリースされ、全米チャートで29位を記録したヒット曲。

ザ・ナイスは、後にプログレ5大バンドの一つ、エマーソン・レイク&パーマーを結成するキーボード奏者、キース・エマーソンが在籍していたギターレスのトリオ・バンド(最初はギターもいたが脱退)。

エマーソンはモーグ・シンセサイザーを初めてロックの世界で本格的に使用した人として有名だが、この時はハモンド・オルガンのみでの演奏である。

映像を見ると、EL&P時代の名物だった鍵盤にナイフを突き刺すなどのパフォーマンスをすでにこの時点で行なっていたことがわかる。

歪ませた音色や、オルガンを痛めつける暴力的なまでのパフォーマンスは、ザ・フーのピート・タウンゼンドやジミ・ヘンドリクスたちからの影響もあるとみられる。

ロック全般に言えることでもあるが、こういった演奏スタイルになっていった経緯として、ロック・ファンの増加によるライブ会場の拡大に伴い、1967年頃からにわかに発展し始めた大音量化と即興演奏による楽曲の長尺化が挙げられる。

ピート・タウンゼンドのオーダーをきっかけとするマーシャル・アンプ史上初の100W、3段積開発や、ジャズ出身のロック・ミュージシャンがいたクリームが始めた即興演奏=長尺化によってギターをはじめ、ドラム、ベース、キーボードなど各パートの演奏技術の水準が上がり、自己主張が強くなっていった。これらの要素もクリムゾンへ受け継がれていくことになる。

https://youtu.be/BLVEIGsG1Og

②ソフト・マシーン「ボリューム1」

1968年12月リリース。プログレの中でもカンタベリー・ロックという独自の音楽を確立したギターレスのトリオによるファースト・アルバム。

カンタベリー・ロックは、英国カンタベリー地方出身者を中心としたメンバーたちによって1964年に結成されたワイルド・フラワーズというバンドを祖とする。

彼らはサイケデリック・サウンドやモダン・ジャズを基とした即興演奏を特徴としながらも叙情性のある音楽を展開し、その後メンバーたちが離合集散して広がっていった結果、一つのシーンが形成されていった。

同時期にデビューしたプログレの代表的なバンド、ピンク・フロイドも同様だが、ソフト・マシーンはこの時点ではプログレというよりもサイケデリックのジャンルに入るバンドであった。

しかしながら、ロバート・ワイアット(ドラム)、ケヴィン・エアーズ(ベース)、マイク・ラトリッジ(オルガン)という、その後のカンタベリー・ロック形成の中心となるメンバーで構成されているため(エアーズはこの後脱退したため、このラインナップは本作のみ)、プログレ重要作としてあげた。

アルバム収録曲の「セイブ・ユアセルフ」を紹介。

プログレ衰退後も、パンク/ニュー・ウェーブや2000年代のポスト・ロック/音響派に至るまで影響を与え続けたカンタベリー・ロックについては、別項で詳しく取り上げてみたい。

https://youtu.be/d6o8CG9khjg

プログレ、プログレと声高に叫んでも、何それ?っていう人は多いと思います。

1969年10月10日リリースの英国プログレ金字塔、キング・クリムゾンのデビュー・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」に至るまでのプレ・プログレと呼べる作品を時系列に紹介していきます。

プレ・プログレ作品を時系列に紹介するその3回目。